“日本の食市場”の最新情報を伝える新企画を通じてFOODEX JAPAN海外オーガナイザーと日本のバイヤーをつなぐ

経営・人材革新センター 観光・サービス産業ソリューショングループ(2024年6月当時)
川口剛生(Yoshiki Kawaguchi)

2022年よりアジア最大級の食品・飲料展示会「FOODEX JAPAN/国際食品・飲料展」の海外業務を担当。

日本能率協会では、産業界への一定期間の貢献により、協会のブランドイメージやステイタスの向上に寄与したと見なされる役職者や取り組み、活動を顕彰する「会長賞」を設けています。2023年度は、17カ国・地域のパビリオンオーガナイザーを招聘し、日本の食の最新情報を提供した「FOODEX JAPAN 2024 Summit」を担当した経営・人材革新センターの川口剛生が受賞。初開催である同企画のコンセプトづくりの背景と具体的な内容、成果、今後の抱負について聞きました。

コロナ禍の情報不足で生じた海外出展者とのミスマッチを改善するために

自身の業務内容と会長賞受賞企画の開催経緯を教えてください。

日本能率協会が主催する「FOODEX JAPAN」は食品や飲料の業界に貢献する展示会であり、最も大きな役割は商談機会の創出です。国際的な展示会であり、世界中の人々が商材を紹介し、買い求めるプラットフォームであることが大きな特徴です。私は日本と諸外国の輸出入に関するプロモーションやキャンペーン、営業活動をサポートする業務を担当しています。世界を巻き込むとてもインパクトの大きな仕事ができていると実感していますね。

FOODEX JAPANは2025年で50回目を迎えますが、コロナ禍により、2020年は中止、2021年と2022年は水際対策強化のため海外からの出展は見合わせとなりました。2023年3月開催のFOODEX JAPANで海外パビリオンの出展が復活したのですが、海外の食品事業者は日本の情報にアクセスできない時期が続いていたため、出展された商材が、コロナ禍などで変化した日本市場のニーズとミスマッチしていたのです。

このミスマッチを少しでも改善し、ビジネスが生まれやすい商材を出展してもらうために、パビリオンを取りまとめる各国の輸出協会の方々、いわゆる「オーガナイザー」を日本に招き、日本の食にまつわる最新情報を提供する「FOODEX JAPAN 2024 Summit(以下、サミット)」を企画しました。オーガナイザーを通じて、FOODEX JAPANに参加する中小企業のメーカーに日本市場が求める商材の動向を広く伝えていただこうと考えたのです。コロナ禍が明けた今こそ実行すべきだと考え、開催時期を2023年7月に決定しました。

「最新情報」「ネットワーキング」「現状の体感」が盛り込まれた2日間

サミットの具体的な内容について教えてください。

企画立案にあたり、日本に滞在してもらい、展示会期間中にはできない交流や体験の機会をつくれれば参加する価値を感じていただけると考えました。そこで、「最新情報の提供」「ネットワーキング」「日本の現状の体感」という3つの価値提供をサミットの軸としました。初日は東京、翌日は京都の2日間です。関西では「ホテル・レストラン・ショー&FOODEX JAPAN in 関西 2024」が開催され、2025年には「大阪・関西万博」も開かれますので、京都まで足を伸ばしました。サミットの参加者は17カ国・地域から35名に上りました。

まず、「最新情報の提供」についてはFOODEX JAPAN企画委員会の委員長企業であるイオンリテール株式会社様、副委員長企業の三菱食品株式会社様に協力いただき、小売事業者、中間物流事業という2つの視点から見た日本市場の現状についてのセミナーを開催しました。また、翌日の京都では、宿泊に関してJR西日本ホテルズ(株式会社ジェイアール西日本ホテル開発)様、外食については「大阪王将」を展開する株式会社イートアンドフーズ様にセミナーをお願いしました。

2つめの価値は「ネットワーキング」です。セミナーは座学で知識を学ぶものですが、各国のオーガナイザーはそれぞれの国で異なるミッションを持ってサミットに参加しているので個別に質問があるはずです。そこで、セミナー終了後に懇親会を開き、イオンリテール株式会社様、三菱食品株式会社様から30名以上のバイヤーの方々に参加していただきました。懇親会でのカジュアルな交流を通じて、「自国のこういう食品を日本で売りたい」「日本ではこういうものが求められている」といった情報のキャッチボールが行われる場が実現したのです。

そして、3つ目の「日本の現状の体感」としては、株式会社ライフコーポレーション様にご協力いただき、スーパーマーケットの視察を行いました。株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア様に日本の小売業の現状をメディアの観点からレクチャーしていただき、その後、ライフの売り場を実際に見て回ったのです。

翌日の京都では、日本料理の名店、菊乃井(株式会社菊の井)様で懇親会を開きました。日本人の味覚やおもてなしを知ってもらうことを目的に、伝統的であり、世界でも評価の高い日本料理をご賞味いただきました。京都はインバウンド観光客もとても多いので、日本の食市場が日本人だけでなく、外国人旅行者も合わせたものであることを実感できたと思います。

サミットでの交流がFOODEX JAPANのさらなる隆盛へ寄与

サミットでは、どのような成果が得られたでしょうか?

まず、サミットに参加した17カ国・地域のうち、16カ国・地域が2024年3月に開かれた「FOODEX JAPAN 2024」に出展し、出展面積も前年比で約10%増加しました。また、サミットで提供した情報提供を基に、「健康」や「安心安全」をテーマとしたコーナーが新たに企画されるなど、出展内容にも変化が見られました。

そして何よりも、オーガナイザーとバイヤーの間で直接の関係性が生まれたことが最大の成果です。バイヤーの方々からはサミットで出会ったオーガナイザーと継続的にお付き合いをして、新たなビジネスが生まれているとお聞きしています。日本能率協会のコーディネートだからこそできる人脈のマッチングの価値を感じていただけたと思います。

日本能率協会のミッションを軸に産業界の振興に努めたい

仕事のやりがいと今後の目標について教えてください。

新たな食品の輸出入と市場開拓は簡単なことではありません。さまざまな困難がありますが、それを解決するのは「人のつながり」だと私は信じています。FOODEX JAPANを通じて、出展者とバイヤーがウィン・ウィンになるビジネスが生まれてくれれば、この仕事に取り組んでいる甲斐があります。

日本能率協会のミッションは産業振興です。自分たちの提供する場によって、新しいビジネスやイノベーティブなことが生まれているか?そこを価値判断の軸として自らに問いかけながら、日本能率協会が存在する大義を見失わずに、日々の仕事に取り組んでいきたいです。(了)