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2024 GOOD FACTORY賞表彰式 4部門で9工場を表彰

2024 GOOD FACTORY賞 表彰式イメージ

「2024 GOOD FACTORY賞」の表彰式が2024年3月7日、東京ミッドタウンホール&カンファレンスで開催された。12回目となる今回は、旭化成、花王、東芝、トヨタ自動車、日産自動車、富士フイルムマニュファクチャリング、マツダ、リコー、リコーインダストリーの9工場が受賞。各企業の代表者、受賞対象となった活動の実施責任者、生産担当のスタッフなどが出席して行われた表彰式では、日本能率協会会長・中村正己のあいさつ、審査委員の紹介に続き、各企業の代表者へ表彰状と楯が贈られた。

GOOD FACTORY賞は2011年に創設され、日本およびアジア地域で工場の生産性向上や品質向上などさまざまな改革活動に取り組み、成果を挙げた工場を4部門で表彰している。2024では、東京工業大学の伊藤謙治名誉教授が委員長を務める審査委員会が、書類審査と現地審査を通して改善・改革活動の「しくみ」「運営」「効果性」「マネジメントの基盤」の4つの視点から審査を行い、受賞企業を決定した。

受賞理由の要旨は以下の通り(敬称略)。

【ファクトリーマネジメント賞】
旭化成株式会社
ライフイノベーション事業本部 ロイカ事業部 ロイカ工場(日本・滋賀県)

スマートファクトリー化を通じた生産技術のさらなる高度化(データドリブン)を進めるべく、体系的、段階的な改革・改善を実施。その過程で、単純なデジタルへの置き換えにとどまらず、データを扱える運用体制づくりを運用する人の能力開発につながるように仕組み化して取り組んでいる。取り組みを通じて、従業員がデータドリブンとは何かを理解し、やりたいことに応じて安心かつ適切にデジタルツールを活用できる環境と教育が用意され、従業員が自ら現場で活用し、改善させ、組織活性化につなげる一連の業務サイクルが構築された。「人・データ・組織風土を柱とした工場マネジメントのスマート化」「データ・ドリブン・アプローチによる工場の意思決定速度・質の向上」「製造現場メンバー主体(自走)による可視化画面の開発・分析・活用による組織活性化」の3点が高く評価された。

【ファクトリーマネジメント賞】
花王株式会社
鹿島工場(日本・茨城県)

ベテラン従業員の減少、経験の浅い若手従業員の増加など、従業員の年齢分布に関する今後の推移を見越して、ストレスフリーなオペレーションとなるよう作業・職務の変革に取り組んでいる。ストレスフリーオペレーションに寄与する権力的距離(役職上位と一般職の精神的・心理的な隔たり)を低減させるため、コミュニケーションの活性化、特に役職上位と一般職の間の双方向のコミュニケーション、全員参加の活動を促進するための仕組みを構築。具体的には、ITシステムを活用した双方向コミュニケーションの仕組みづくり、生産活動の清流化を目指すための知見収集と情報共有に寄与するシステムの運用、製造メンバーの生の声を聞く「ラウンドテーブル」などの仕組みと運用、従業員を中心に行われてきた特徴あるESGに寄与する活動の推進などを実施し、独自の工場マネジメントを展開している。

【ファクトリーマネジメント賞】
東芝産業機器システム株式会社
三重事業所(日本・三重県)

主力機器の品質不良、現場作業における災害の多発をきっかけに、より安全で高品質な製品を生産性高く製造する事業所を目指して業務改革を推進してきた。そのための仕組みとして、5S活動、SGA活動(小集団活動)、CFT活動(Cross Functional Teamによる改善活動)の3重構造の体制をつくり、人材育成も含め全員参加で活動する仕組みを整えた。さらに、CFT活動のチームは、ライン部門(現業部門)である製造メンバーや製造技術者と、スタッフ部門のシステム、自動化、IE(Industrial Engineering)、現場改善ができるプロフェッショナルの双方が必ず参画する構成とし、密な定例会議を通じてチームを運営していく体制も、活動実施の信頼度向上、効率アップに寄与している。こうしたマネジメント手法をさまざまな活動に適用したことにより、災害件数が年間1~3件に減少し、品質保証費が大幅に減少するなどの効果を上げている。

【ファクトリーマネジメント賞】
トヨタ自動車株式会社
TOYOTA MOTOR VIETNAM CO., LTD.(ベトナム・ハノイ)

急拡大するベトナム市場に対応するため製造基盤の強化が急務となる中、複雑なマネジメントや高額な機器を用いず、地道な管理手法をシンプルに適用し、マネジメントシステムとして確立した。具体的には、タイにあるトヨタのエンジン工場からマネジメント手法である三本柱活動(①標準作業の徹底と改定、②加工点マネジメント、③自主保全)を学び、それをそのまま真似るのではなく、自社工場に合うようにアレンジ。三本柱活動を成功させる仕組みを「5キードライバー(トップの強い思い・全員に時間を・やることが明確・現場で回す定期評価・やれば報われる)」と読み解き、これらを文化になるまで推進することで実効性の高い活動につなげた。ローカルメンバーが工夫ある改善活動を高い自律レベルで実施し、現場のマネジメントが従業員全体に浸透した一体感のある活動となっている。

【ものづくりプロセス革新賞】
日産自動車株式会社
栃木工場(日本・栃木県)

高級SUV電気自動車「アリア」の生産開始を機に、未来の工場作りを目指した生産工程を実現させた。Nissan Intelligent Factory(NIF)の思想に基づき、生産工程の自動化はもちろん、設備保全に対する予知保全、物流・搬送に対する自動化など、多方面にわたる自動化を実行。さらに、NIFを支えるTPM活動を幅広く徹底して推進し、個々の生産現場での活動だけでなく、複数の製造課が連携した活動、間接部門を含む工場全体の活動として取り組んでいる。加えて、RPAなど新技術も活用して業務効率化を行うことで、上述のような高付加価値業務への転換もあわせて実施している。優れたものづくりシステムであるNIFとTPM活動を融合させ、先端技術での自動化推進やデジタル化に偏ることなく、間接部門を含めた工場全体の現場力向上も強く意識した、底力のある活動を推進していることが評価された。

【ものづくり人材育成貢献賞】
富士フイルムマニュファクチャリング株式会社
竹松事業所(日本・神奈川県)

ペーパレス化やデジタル化にともない、複写機やプリンタの消耗品を製造する同事業所の生産量が減少。難局を乗り切るため、経営者・管理者と現場第一線のメンバーが一体となった改善活動を強力に推進し、その過程で“育成する・される”という風土が醸成されている。さらに、“改善する人”が活躍する仕組みや取り組みとして、改善をベースとした自社流の生産方式「IPW(Innovation Production Way)」、トップと従業員が心理的距離を縮める各種コミュニケーションの場と機会づくり、将来に向けた新たな挑戦と現場の困りごとの改善をスタッフや技術、R&Dと一緒に改善していく部門横断活動を展開している。こうした取り組みを通して同工場では人が育つ文化・風土が形成され、さらに個と組織が育つ仕組みと相まって、厳しい環境においても改善活動の中で着実に人・組織が育ち、事業競争力の向上という形で結実している。

【ものづくり人材育成貢献賞】
マツダ株式会社
本社工場(日本・広島県)

マツダでは、MPS(Mazda Production System)に基づいて職場の管理改善に取り組み、現場力と改善力のレベルアップを図っている。MPSのポイントは、価値編成とジャストオンタイムであり、その二つを実現させる人財育成が工場運営上の鍵となっている。この「人中心」の考えに沿って、同工場では、管理職と現場の接点である職長の活躍最大化によってMPSをレベルアップさせ、人を育ててESを向上させることがCSにどう繋がるのかを明確にしている。さらに、ビジネス効率概念で活動区分を明確にし、MPS、ストレート生産、ロス排除などの組み合わせを整理して推進。活動活性化面にも手をいれ、人を意識づける場を定義して場づくりへ反映している。教育についても、体系整理や時代の流れに合わせた取り組みも含め対話を重視する工夫を実践。革新を牽引するものとしてマイスターを位置付け、職場レベルアップや現場革新活動を進めている。

【ファクトリーマネジメント賞】
株式会社リコー
リコーデジタルプロダクツビジネスユニット OC事業本部 グローバルRRセンター(日本・静岡県)

脱炭素化・循環型社会の実現という現代社会の要請に応え、製品のリユース・リサイクルというビジネスモデルを構築し、実現を図っている。工場運営に際しては安全第一を文化にまで昇華させる活動を非正規社員も巻き込んで推進し、「自律型人財」の測定・評価方法や育成方法などを整備している。さらに、センター運営においてサスティナビリティーを重視し、具体的な数値目標を提示。新造機同等の品質のリユース製品、新造機で活用できるレベルの回収製品リコンディショニング技術を実現し、回収製品の処理目標を設定した環境負荷低減活動にも取り組んでいる。現実のビジネス・プロセスとしてリユース・リサイクルによる生産活動を行い、そこで発生する問題点や課題、ビジネスモデルなどを目に見える形にまとめており、これからリユース・リサイクルに取り組もうとしている企業や事業所にとって大きな指針となる。

【ファクトリーマネジメント賞】
リコーインダストリー株式会社
東北事業所(日本・宮城県)

東日本大震災など、度重なる困難を従業員全員参加による「ものづくり力」によって乗り越えてきた事業所。生産のリコーウェイ(RWP)に基づく生産活動を推進し、「防災」「働きやすさ」「KAIZEN活動」「生産革新(デジタルマニュファクチャリング)」「自律型人財の育成」にトップダウンとボトムアップの両方から取り組んでいる。具体的には、RWPの「12の基礎」を軸として、生産活動で大切にすべきことを明確にした工場のマネジメントを実践。事業所を横断した間接職場の5Sレベルの向上活動を展開し、社員が明るく楽しく働きやすい職場環境づくりを推進した。KAIZEN活動では、ラウンドテーブル方式で学び合いを重視し、高い業務成果を挙げている。さらに、デジタルマニュファクチャリング実践による生産革新活動、現場が主体となった自律的活動の展開、現場活性化のためのユニークな仕組みの構築と実践に取り組んでいることなどが評価された。