新たな職場40名強の管理監督者を任されたが、同職場は直近で災害が起き、雰囲気が悪く、部下もやる気をなくしてる状態。
そんな職場の姿が変わっていく、職場のチェンジストーリーをお届けします。
私が第四小型成形班へ異動した時のストーリーを紹介します。突然の辞令に動揺を隠しきれませんでしたが、課長から「良い人材がこの班にはいるが、今のままではいけない。社員を教育してほしい」と言われました。
日々の業務を確認すると、以前の職場では当たり前だったことができていませんでした。基本はできているけれども、何かが足りないと感じ、課長の言葉の意味が理解できました。
彼らに足りないものは何だろうか? モチベーションが低く意欲がないのか、時間がないのか、さっぱりわかりませんでした。誰にも相談できず一人で考え込み、自然と笑顔を失っていました。
そんな時に、妻から「悩んでも仕方ないよ。行動あるのみ」と言われ、子供からも「パパ頑張って」と背中を押され、何かが自分の中で吹っ切れました。
まずは、どのように業務をしているのかを確認することにしました。例えば、報告書の作成です。提出が遅いため、どこに理由があるのかを聞くと「やり方を教えてもらったが覚えられず、昔の方法しかできない」とのことでした。「確かに一度だけではわからないかもしれない。自分の事で手いっぱいだし、負担が大きいだろうな」と思いました。
そこで業務を見直し、業務を分担することにしました。業務が多く、班長が全てに対応するのは無理があるため、業務の整理をおこないました。どのように業務をしているのかを把握し、やりやすい環境にしてあげることが大事だと考えました。
最初に心がけたのは、しつこい教育です。仕分けした業務を班長、リーダー、作業者ごとに説明し、何度でも教えました。わからないことは、何度でも聞いてほしいとも伝えました。そして実践です。対象者毎に教育をおこない、わかるまで何度も何度も教える日々が続きました。
次に、気になったのは現場での改善でした。やりにくい作業だとわかっていても、改善がなされていませんでした。なぜ改善しないのか。その理由を知りたいため、みんなと話そうと考えました。部下と話す機会を設け、コミュニケーションを頻繁にしました。
改善作業を進める上で心がけたことは、実際に改善を経験させることでした。やる気があり、次の班長にと考えた牧野さんに打合せから参加してもらうことにしました。私は改善のリーダーの立場となり、実行してみせることにしました。改善が終わると、牧野さんの表情は晴れやかで目がキラキラしていました。
この改善の報告を牧野さんにお願いするとうれしそうに返事をし、堂々と報告してくれました。それは自信に満ちあふれていた姿でした。
報告が終わり、「報告、お疲れ様。ありがとう」と伝えました。すると「緊張したけど、良い経験になりました。色々な改善をやりたい」と言ってくれました。牧野さんがやる気になり、行動してくれることを確信し、私は背中を押しました。
牧野さんが行動を開始するようになりました。リーダーたちを集め、前回のミーティングでの話した内容を話し、安全・品質などの問題を選別し、項目を決めてくれました。自分で考えさせて、私は手を出しすぎないように心がけました。
牧野さんを含めたリーダーたちが奮闘し、今では作業者を巻き込み、多くの改善を実行してくれています。目標とする職場にはまだ到達していませんが、もう彼らの成長は止まることがありません。不足していた経験を積み、自信がつき、やる気が出たことで行動力が上がりました。
メンバーが自分たちで行動できるようになり、モチベーションも上がり、職場の雰囲気も良くなり、大きく成長してきました。部署を引っ張ってくれた牧野さんは今では立派な班長です。
住友ゴムのプロジェクトとして指導教育に伴う、職場活性化の取り組みで特別賞を受賞することもできました。私も、仲間と一緒に成長を続けています。
藤本さんの発表を聞いて、2つ良い点があったと思いました。一つは、現場の方々とのコミュニケーションの中で、うまくいかないことを人のせいにしないということです。人のせいにしても物事は解決しません。
覚えようとしたけど、なかなか覚えられない業務に対して、理解できるように丁寧に教えていく。このコミュニケーションは、なかなかできません。その点が藤本さんの優れた能力だと思いました。
もう一つは後半にお話が出てきた牧野さん、部下の育て方です。部下に任せることが重要なのですが、この任せ方が難しいのです。
「任せること」と「無関心でいる」というのは、全く違います。忙しいから任せた、あとはもう無関心、これは全然ダメです。藤本さんの任せ方の良いところは、任せる前にまず改善を成功させたことだと思います。
一緒に改善に取り組んで、うまくいくためのポイントを理解できるようにしていく。そして、改善のポイントが理解できたところで、任せる。無関心とは違い、任せた後に、必ずその人が成功できるかどうかを見守る。これはマネージャーとして、すごく重要なことだと思います。藤本さんのマネジメント能力の高さを感じました。